違う見方も大切
欠点の裏側に気づく

 みんなで悩みを話し合っていたときのことです。その話に関心を持てなかったA君が、突然まったく関係のない話を始めました。場の雰囲気にそぐわない話だったので、「空気読めよ」といら立つ人もいました。
 A君は日頃からこのような反応を受けることが多い人なのです。ところが、Bさんは「話が煮詰まっていたから、空気を変えてくれたんだよ。空気清浄器みたいなもの」と言いました。
 人の気分を尊重せずに自分が話したいことだけ話されては、会話が成立しません。A君のような態度に対して、私たちは腹を立てたりあきれたりしがちです。でもBさんに言われてみると、確かに、少し気詰まりになりかけていた空気をA君が入れ替えてくれたようでもありました。そして面白いことに、周りがA君の態度も別にいいかなと思ったとき、A君は自分の態度を少し反省したようなのです。

 私たちは、誰かの欠点が目に付くと、その人を非難したり疎んじたりしがちです。しかし、人に言われても直らなかったから欠点になっているのです。批判だけ繰り返しても態度が改善されることはないでしょう。
 むしろ、そう振る舞ってしまう意味や仕方なさ、あるいは面白さに周りが気づいたとき、人の言動は変化していきます。それは、自分が受け入れられたと感じることで、自分自身の態度を振り返るゆとりが生まれるからかもしれません。
 相手の言動を単に欠点として見ているとき、相手の良さは目に入りにくいものです。でも、同じ相手について全く違った捉え方をしている人もいます。そういう人の意見を聞くことで、初めて相手の良さに気づかされます。自分だけ、あるいは、似たような感じ方の人だけで考えていては、一つの見方から抜け出せないのです。

 あなたは、相手の欠点ばかり目についてしまうことはありませんか。そのようなとき、相手の欠点の裏側に隠された意味や面白さを気づかせてくれる人があなたの周りにいますか。多様な人間がいてこそ、いろいろなことが見えてきます。学校も家庭も、そのような多様性がある場であってほしいものです。

  <2014.12.28中日新聞「親子でホームルーム」>

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