できないこともある
自信につながる努力を

 誰でも、何か不得意なものを持っています。勉強やスポーツが苦手な人もいますし、物を片付けられない人、あるいは、人付き合いが不器用という人もいるでしょう。私たちは「できなさ」とどう付き合っていけばよいのでしょうか。

 大人は、子どものできない部分にどうしても目がいきがちです。こんなこともできなくては将来困るのではないかと心配するわけです。しかし、自分のできない部分ばかり注目されていたら、私たちはどう感じるでしょうか。なんだか自信を持てなくなっていくのではないでしょうか。「自信を持てない」という若者たちと話していると、彼らが自信を失ったのは、何かができないからではなく、できないということばかりを言われ続けてきたからではないのかと、私には思えることがあります。

 一つのことができるようになるために必要なエネルギーは、人によって大きく異なります。多くの人にとってちょっとした努力でできることでも、苦手な人にとっては、膨大な時間とエネルギーを注いでもなかなかできるようにならないこともあります。
 あなたが本心からできるようになりたいと思うなら、それが大変なことだとしても頑張ってみる価値はあります。そのときには、一人でがむしゃらに頑張るのでなく、誰かに相談することも大切です。ちょっとしたヒントやサポートがきっかけで、できるようになることもあるからです。

 しかし、できなければ生きていくのに困るなどということはそんなにはありません。できないことが多少あっても、他で補うことで、人は案外生きていけます。生きていくのを困難にするのは、「できなさ」よりも、むしろ「自信のなさ」です。苦手なことに注ぐエネルギーを、自分が生き生きとできることに向ける方が自信につながるかもしれません。
 できないことは努力すべきだと単純に考えず、頑張れば自信につながりそうなことなのか、それとも他に使うべきエネルギーを消耗することになるのか、きちんと判断していきたいものです。

  <2015.6.28 中日新聞「親子でホームルーム」>

戻る