人に合わせてしまう

 自分の本当の気持ちを抑えて、人に合わせてしまうことはありませんか。
 友達とよく遊びにでかけるのだけど、何だか疲れてしまうという人がいました。友達と遊ぶのは好きなのですが、都合が悪いときや気分が乗らないときもあります。でも誘われるといつでも反射的に「うん、いいよ」と答えてしまうのです。そのうち、だんだん友達との関係を重荷に感じるようになりました。こういうことを繰り返していると、友達関係が続かなくなることもあるでしょう。あるいは、何を言われても断れない、対等でない関係になってしまうかもしれません。
 私も小学校低学年のころは、嫌なことがあっても嫌と言えずに我慢してしまう子供でした。毎日のように遊びに来る子がいたのですが、いつもその子に合わせているうち、その子の言いなりになるような関係になってしまっていました。その子も私が言う通りになるので、自分の態度をコントロールできなくなっていったのかもしれません。そのうち私たちは互いに距離をとるようになり、一緒に遊ぶことはなくなっていきました。

 人間関係でギクシャクしたくないと誰もが思います。そして、いい関係を崩さないように自分を抑えて相手に合わせるときもあるでしょう。しかし、こちらが心から楽しくなければ、相手も本当には楽しくないはずです。自分の気持ちを抑えていては結局いい関係にはならないのです。
 いい関係を続けるためにも、自分の本当の気持ちを伝えることが大切です。相手が期待するのとは異なる気持ちを持っているとき、それを言い出すのには抵抗を感じるかもしれません。でも、そこを乗り越えて一度言うことができれば、次からはずっと楽に言えるようになると思います。
 自分の気持ちをはっきりと言えないときもあるでしょう。誘われたけど断りきれないときには、例えば「どうしようかな」と考える間を取ることで、相手と同じ気分ではないと示すこともできます。相手との間に適度な距離をおいてみることも大切かもしれません。
 表面的な仲良しムードよりも、それぞれの感じ方が違うと分かりあっている方が、互いに居心地が良いと思いませんか。

<中日新聞2011年2月20日付「親子でホームルーム」>

戻る