人と比べる
自分は自分だと思おう
「○○ちゃんはできたのに、あなたはどうしてできないの?」
親や先生からこんな言葉を言われたことはありませんか。できないことを注意されるのは仕方ないとしても、人と比べられると、自分はダメな人間と言われたように感じてしまいます。
「みんなにできることが、どうしてできないの?」と、特定の誰かではなく、”みんな”と比べられることもあります。比べられる相手が”みんな”であるだけに、ますます自分が否定されたように感じてしまいます。逆に、人と比べてほめられ居心地が悪いこともあります。それは、自分が肯定されるのと引き換えに誰かが否定されているからかもしれません。自分と比べられている相手との関係に気を使い、単純に喜べないのです。
人から比べられるのは嫌だと感じる人でも、自分では人と自分を比べているかもしれません。頭の良さ、容姿、友達付き合い、性格など、さまざまなことで、人との比較が気になってしまうことはないでしょうか。
人と自分がどのように違うかを考えることは意味があります。人との違いを知ることで、自分自身がどんな人間かも分かっていくのですから。でも、それは、どちらが上と順位をつけることとは異なります。例えばテストの点数は順位をつけられますが、頭の良さに順位をつけることは難しいでしょう。頭の回転が速い人、じっくり考える人、記憶力が良い人、本質を見抜ける人、人の気持ちが分かる人、面白いことを思いつく人…それぞれが異なる個性なのです。
人は、自分に欠けているものがあると、他の面でそれを補おうとするものです。それがみんなとは違うその人の持ち味になることもあります。また、一人ではできないので他の人の手助けを求めます。そこから、出会いや人間関係が広がることもあります。このようにしてその人の個性がつくられていきます。
私たちは、一人ひとりが違う良さや課題を持っています。人を基準にする必要はなく、自分自身の良さや課題を見つければよいのです。人にできることだから自分もできなければと思う必要はありません。そして、本当の自信とは、人よりできると思うことではなく、「人は人、自分は自分」と思えることなのかもしれません。
<2013.3.31 中日新聞「親子でホームルーム」>