人にイラッとするとき
よい面にも気づいて
人にイラッとするのは、どんなときでしょう。人からイライラをぶつけられたとき、迷惑をかけられたとき、あるいは、自分の思い通りにならないときでしょうか。自分にとっても相手にとっても不愉快なこのイライラについて考えてみましょう。
Aさんは、相手の気持ちにお構いなく自分の欲求や衝動を言動に出すところがありました。人の感情を逆なですることを平気で言う、自分の気にくわないことは聞こうとしない。このようなAさんに、周りの人たちはイライラを募らせました。
周りがAさんにいら立ったのは、「(自分たちには読めている)空気が読めない」「(自分たちには抑えられている)感情を抑えられない」と思えたからです。自分たちが普通にやっていることをできない人を見て、「こんなこともできないの?」という思いが生じたのです。
一方、みんなが言いたいけど言えなかったことをズバッと言ってくれたり、周りに壁を作っていた人に話しかけて打ち解けていったのも、このAさんでした。初めはいら立っていた人たちも、空気を読まない人、自分を抑えない人がいることのプラス面にも気づかされました。
それに、Aさんも好きで人をいら立たせているのではなく、自分自身をコントロールできずに困っていることも分かってきました。周りの人は徐々に、Aさんの態度も「仕方ないか」、さらには「面白いかも」と思うようになっていきました。すると、Aさんの態度も少し協調的になっていったのです。
できないとダメという感覚は私たちを頑張らせてきたかもしれません。でも、この感覚は、できない人を否定する気持ちにもつながります。これは、イジメや虐待の土壌にもなります。
私たちがイラッとする相手は、私たちを縛っている枠組みからどこかはみ出している人です。その人のことを知ることで、自分の枠組みの狭さに気づかされることがあるのです。
<2016.3.27 中日新聞「親子でホームルーム」>