自分がやりたいこと
人と比べず探してみよう

 「不得意な科目は?」「嫌いな科目は?」
 このように聞くと、多くの子どもが「不得意な科目と嫌いな科目は同じ」と答えます。

 趣味の世界では、得意ではないけど好きということはよくあります。それは、人との比較に気を取られずに楽しめる世界だからかもしれません。勉強では人との比較が意識されがちです。人と比べだすと、やりたいという気持ちが見失われることがあるのです。
 私は中学のころ熱心にギターを練習していました。でも高校に入るとぱたりとやめてしまいました。ギターの抜群にうまい同級生を見て「自分は全然ダメだ」と気持ちが冷めてしまったのです。本当は、音楽を楽しむのに人よりうまいか下手かは関係ないことです。今思うと、当時の私はギターをうまくなりたかっただけで、ギターの音を楽しめていなかったかもしれません。

 若い人から「自分が何をやりたいのか、よく分からない」と相談されることがあります。そういう人も小さいころはやりたいことがいっぱいあったのだと思います。絵を描くのも、身体を動かすのも、新しいことを学ぶのも楽しかったという人が多いはずです。でも、人と比べてうまくやれないことは、だんだんつまらなくなってきたのではないでしょうか。
 これには大人にも責任があります。子どもが人よりうまくやれると褒めて励ますのに、うまくできないことには否定的なまなざしを向けているかもしれません。
 うまくできないのは、やり方がその人にあっていないからという場合もあります。中学高校時代に英語が全然できなかった人がいます。でも、英語に関心はあったのでしょう。高校卒業後、ニュージーランドの英語学校に留学しました。何ヶ月か通ったのですが、やはり英語は上達しません。この人は、学校を放り出して、旅に出ます。色々な国で人と出会いながら旅を続け、数ヶ月後に学校に戻った時には英語がペラペラになっていたそうです。学校ではダメだっただけで、英語を修得する力はあったのです。

 あなたは、自分がやりたいことではなく、人と比べてうまくできそうなことを探してはいませんか。人より「できる」「できない」は脇に置いて、自分がやりたかったことを思い起こしてみてはどうでしょう。

  <2013.12.29 中日新聞「親子でホームルーム」>

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