自分の気持ちに従う

最近、感動できる映画に出合わないという若者と、映画について話をしました。
「感動できる映画って、どんな映画?」
「見ていて希望がわいてくる映画ですかね」
「どんな映画だと希望がわくんだろう?」
「主人公が頑張っているとか…」
 彼は、かつて感動したという映画の話をしてくれました。それは、絶望的な状況でも希望を持って生き続ける男の物語でした。男は、苦しい立場に追いやられる結果がわかっていても、気にもかけず、自分自身の正直な気持ちに従って行動していくのです。
 私たちの日常には、やりたくなくても我慢してやらなければならないことが多くあります。やりたいと思うけれど、気持ちが中途半端でやり通せないこともあります。自分の気持ちを貫くことは簡単ではないのです。だからこそ、まわりの人にどう思われようが、どんな結果が待っていようが、本当の自分自身の気持ちにつき動かされて行動し続けている人を見たとき、新鮮な感動を覚えるのでしょう。

 ところで「頑張る」という言葉は、本当にやりたいことを真剣にやるときにも、やりたくないけれど我慢してやるときにも使います。この映画の主人公を「頑張っている」と若者が言ったのは前者の意味です。大人は子どもによく「頑張れ」と言いますが、これはどちらの意味でしょう。
 子どもが何かに頑張っている姿を見るだけで、大人は安心しがちです。でも、頑張らされているだけで、本人に何かをやりたいという気持ちが育っていないこともあります。自分の気持ちとかけ離れたことに頑張らされて、エネルギーが失われていく人もいます。

 みなさんには、我慢して気持ちを抑えてしまうのではなく、むしろ、しっかりとした自分の気持ちや意志を育てていってほしいと思います。自分はどうしたいか、どうしたくないのか、考えてみてください。人と話す中で、自分の気持ちを振り返ることも大切です。自分の気持ちというのは、人との関わりの中で修正され、変化していくものでもあるのです。
 子どもが自分自身の気持ちに基づいて行動することを励ましたいと、私は思っています。気持ちと行動を一致させることができれば、毎日がもっと生き生きとしたものになるに違いありません。

  2011.5.22 中日新聞「親子でホームルーム」掲載『頑張る気持ち―どうしたいのかを正直にー』を改題。
なお、文中で紹介した映画は、「ショーシャンクの空に」です。

戻る