自分の持ち味
皆さん、自分の持ち味は何だと思いますか。どんな人にもその人なりの持ち味があり、魅力があります。でも、その良さが気付かれていないこともあります。
Aさんはあまり器用ではなく、いろんなことが要領よくできません。失敗もよくします。周りの人から「そんなこともできないのか」などと、きついことを言われるときも多く、くよくよと考え込んでしまいます。ところで、Aさんと話していると、同じ年代の人が考えないような深いことも考えていて、時々人をハッとさせるような鋭いことを言います。これはAさんが物事を割り切って考えられず、いつも考え込んだり悩んだりすることとつながっているのでしょう。要領がいい方がよいという常識的な価値観だけで評価すると、Aさんの持ち味は見えません。
B君は、学校の授業に全くついていけず、「勉強は全然ダメ」と言っています。よく聞いてみると、彼は疑問を持つとそれが解決するまで先に進めない性格なのです。授業で先生の話を聞いていると、「なんでだろう」と疑問が湧いてきます。そして、そのことを一人で考え込んでしまって、気が付くと授業は先に進み、おいてきぼりになっているのです。でもB君は面白い発想をしていて、彼が疑問に思うことをしゃべると、周りの子も考えさせられます。
C君は、学校でいつも叱られてばかりです。勉強を嫌がる、掃除道具を振り回して物を壊す、真面目な子をからかうなど常に羽目を外します。一方で、周りの子の間で気まずい雰囲気が生まれると、わざとバカなことをやってみんなを笑わせたり、孤立している子には声をかけたりもします。
ここに挙げたような人たちは、世間一般が子どもに期待することと少し違う所に持ち味を持っています。このため、その持ち味を生かすようには励まされず、そんなことではダメだと否定されることの方が多いのです。でも、それぞれが魅力を持っているし、社会にとって必要な人たちです。
周りの期待や評価を基準にした見方で、自分という人間の独特さや持ち味を見失ってはいませんか。皆さんには、自分の持ち味とずれたことを追い求めるのではなく、自分の個性をよく知り、どうすればそれを生かせるかを考えてほしいと思っています。
<2011.11.20 中日新聞「親子でホームルーム」>