緊張して手が震える
「黒板に答えを書くよう指名されると、チョークを持つ手が震える」という人と話をしました。「そのとき何を思っているの?」と聞くと、「震えていることをみんなに気づかれたらどうしようって…」。「じゃあ、緊張して手が震えるって自分から先に言っちゃえば、ちょっと楽になるかもしれないね」と、私は返しました。
この人は、「緊張する人間だと思われたくない」と意識することで余計に緊張してしまう、という悪循環に陥っています。私にも似た体験があります。子どものころから野球が苦手でした。でも、小学校では男子は野球ができて当たり前という雰囲気でした。私は「ヘマをするところを見られたくない」と思って頭が真っ白になり、ますますヘタクソになってしまうのでした。人からどう思われるかを意識した途端、うまくできなくなってしまう。こういう体験が皆さんにはありませんか。
実際には、周りの人はどう思っているのでしょう。あなたなら人前でうまくできない人を見てどう思うか、考えてみてください。「大変だな」と気を使うか、「うまくできないんだ」と単純に思うだけか、または、さほど関心を持たないかのいずれかではないでしょうか。
多くの場合、本人が心配しているほど周りの人たちはマイナスに見ていません。うまくできない人をばかにしたり責めたりする人も確かにいます。でも、そういう人の態度が気になってしまうのは、うまくできない自分を認められない気持ちが自分自身の中にあるからかもしれません。
そもそも人の目を意識するのは、今やっていることに興味を持って没頭できていないときです。ですから、どうすれば人の目を意識しないようになるかではなく、どうすれば興味を持てるようになるかを考えてみる方がよいのです。 あるいは、これは自分が興味を持てないことだから人目が気になるのは仕方がないと開き直ってはどうでしょう。人前で体がこわばるとき、あなたはもっと違うことをやってみるといいよ、と体が教えてくれているのかもしれないのです。
<2014.9.28中日新聞「親子でホームルーム」>