周りにあわせるのがつらい
「自分らしさ」のしるし

 「フツーの子になろうとして無理していました」。ある人が私に話してくれた言葉です。この人は、興味を持っていることや考えていることが同年齢の人たちと随分違ったのです。それを出すと浮いてしまうと感じたので、表向きはみんなの話題に合わせて目立たないようにしていたのでした。
 でも、素(す)の自分を出さないでいると、気持ちが伸び伸びできないのです。さらに、「自分が本当はどうしたいのか」まで、モヤモヤしてくるのでした。この人の話を聞いて、私は別の人のことを思い出しました。

 私がかつて学校で担任をしていたクラスに、いつもおどけたことをやってみんなを笑わせている人がいました。彼が卒業後に遊びにきたとき、「俺がバカやってたとき、どうして止めてくれなかったんですか?」と私に言うのでした。
 彼はわざとバカをやることでクラスに自分の居場所をつくっていたのですが、本人はそれがそんなに楽しかったわけでもなかったのです。けれど、そういうキャラクターだと周りから思われている中で、自分の立ち位置を変えることは難しくなっていったのでした。当時の私はそのことに気づけていなかったのですが。

 私たちは、自分でもほとんど意識することなく、"相手に受け入れられる自分"を演じていることがあります。自分が本当にやりたいことではなく、それをやると人との関係がスムーズになると感じられることをやってしまうのです。
 自分の意志ではなく、周りの空気によって自分が動かされているわけです。こういうことを続けていると、自分らしく考えたり行動したりすることからどんどん離れてしまいます。

 あなたは、人に見せている自分が素の自分とずれていると感じることはありませんか。周りの空気に合わせてしまう自分に居心地の悪さを感じることはないですか。
 そのような感じ方の中に、あなたの自分らしさがあります。葛藤(かっとう)を持っている人は、周りに流されない自分がちゃんとある人です。その自分らしさを大切にする方法を考え続けてほしいのです。

  <2016.5.29 中日新聞「親子でホームルーム」>

戻る