マイペースを大切に
自分の意志育てよう

 ある中学生からこんな話を聞きました。「女子はよく休み時間に友達とトイレに行く。あれはついていかないと、自分がいない所で何を言われるか分からないということもあると思う」
 いつも一緒なのは楽しいからだけでなく、そうしていないと不安だからというのです。相手からどう思われるか不安だからメールにすぐ返信するという話と、どこか似ています。「しばらくケータイが壊れていたのでめっちゃ不便だった。でも、ラクだったなあ」と言った人を思い出します。安心できる人間関係には適度な距離も必要です。

 私たちの生活では、やりたくなくてもやらざるをえないことがあります。勉強もそうだという人もいるでしょう。気乗りしないことをやるとき、自分なりに大切さを感じるからするのでしょうか。それとも、人から良く思われたいからでしょうか。
 人からどう思われるかに意識が向き過ぎると、自分らしさを発揮しにくくなります。いつも人の評価を基準に行動していると、自分の意志も育ちません。

 かつて高校の教員をしていたとき、考えさせられたことがありました。三年生の面談で自分がどういう方向に進んだらいいかを、私に決めてほしいという生徒がいたのです。良い成績を取るよう努力してきた生徒でしたが、自分がどうしたいかを考えてこなかったのです。一方、あまり成績にとらわれず、やりたくないことは「嫌だ」とはっきり言うような生徒は、自分が進みたい方向もはっきりしている場合が多かったのです。

 自分はどうしたいのか主張するのは大切ですが、易しいことではありません。はっきり自己主張できなくても、周りに流されないためにできることはないでしょうか。
 「メールがきても、面倒くさいからすぐに返信しない。そういう人間だと思われているから大丈夫」という人がいました。周りからマイペースな人間と思われれば、自分のペースを貫きやすくなるというわけです。できるところからでよいので、皆さんが自分の意志を出せるようになっていくことを願っています。

  <2014.3.30 中日新聞「親子でホームルーム」>

戻る