親の期待 ー重荷なら話してみようー

 「家にいると疲れる!」。中学生のAさんがポツリとこんなことを言いました。「だって、いつも元気そうにしていないといけないんですよ。そうでないと、親の機嫌が悪くなるから」
 親は、子どもが明るい表情をしていることを期待しがちです。でも、そのような期待に応えられない気分のときもあります。そんなとき、あなたはどう感じるでしょう。
 親のことなど気にしないという人がいます。自分の気持ちとずれたことを期待する親に反発する人もいます。あるいは、親の期待とずれている自分を、ダメだと感じてしまう人もいるでしょう。
 親は子どもが何かをできるようになってほしいと期待します。B君は、小さいころピアノを習っていました。熱心に練習して上達してきたので、親がすごく褒めたそうです。すると、B君はピアノの練習をぱたりとやめてしまったといいます。
 それまでは、自分が好きで、うまくなりたいから練習していたのでしょう。上手になることを親から期待されていると感じた途端、親のために練習しているような気分になり、しらけてしまったのではないでしょうか。「親が熱心に応援し過ぎるので、部活が嫌になってきた」とか、「期待してるよ、と言われるとやる気をなくす」などという話をいろいろな人から聞きます。あなたは期待が重荷になった経験はありませんか。
 小さいころは、親の期待通りに動くことが自然だったかもしれません。でも、子どもは成長するにつれて、親の気持ちと自分の気持ちは同じではないことを意識するようになります。あなたの意思を先回りして親が期待することが、うれしくはなくなってくるのです。
 どんな年になっても、親は子どもに期待するものですし、子どもは親の期待に無関心ではいられないものです。では、親の期待が励みとなるのはどんなときでしょう。
 それは、あなた自身の気持ちを親が尊重し、応援してくれるときではないでしょうか。私たち大人にとっては、これは「言うは易く、行うは難し」なのですが。
 親にどんな期待をしてほしいか、どんな期待をしてほしくないか、友人同士や親子で話し合ってみてはどうでしょうか。人と話すことで、あなた自身がどうしたいのかもはっきりとしてくるはずです。

  <2012.6.24 中日新聞「親子でホームルーム」>

戻る