中学の頃

 僕の中学時代について、いくつか思い出すまま書いてみる。

■眠れなかったこと■

 ある時突然眠れなくなった。翌日から、夜ふとんに入ると「眠れないのでは」と不安が高まる。眠ろうとあせればあせるほど,目が冴えてくる。こんなことが何日も続き、そのうち、夜が近づくこと自体が不安になるほど神経をすり減らしていった。いろいろ本を読んでみると、不眠から抜け出すコツは眠ろうとしないことだと書いてある。理屈はわかるのだが、眠ろうとしないようにしようと考え過ぎて、結局眠れない。眠れない期間はかなり続き、僕は疲れきってしまった。そんなある日、「眠れなくてもいいや」という気持ちが何故だか突然わいてきたのだった。その日は、「寝付きが悪かったら、すぐに起きて徹夜して本を読もう」と思い、読む本を準備してふとんに入った。すると、そのままぐっすり眠ってしまったのである。その日を境に、僕は人並みはずれて寝付きの良い人間になった。高校山岳部でテントの中で先輩達がなかなか寝付けずにいたときも、教員になって合宿先の旅館で同僚が寝付きにくいとぼやいていた時にも、僕だけさっさと眠ってしまうのだ。今でも、たまには寝付きが悪いときもあるが、そういう時には起きて本を読む。そして、時間を得した気持ちになる。

■ギター■

 ビートルズのギタリストであるジョージ・ハリソンが指から血が出るまでギターを練習したという話をラジオで聞いて、とても感銘を受けた。フォークギターを親に買ってもらうと、毎日指が痛くなるまで練習した。とうとう左手の指が切れて出血したときは、ただただ嬉しくて、翌日学校で「血が出たぞ」と自慢したことを覚えている。中学の間は毎日真面目に練習していたのだが、高校に入ると、だんだん弾かなくなってしまった。同級生で本当にうまい子の演奏を見てしまったこともきっかけだったように思う。

■頭髪検査■

 僕は短い髪が嫌いだったのだが、校則は「前髪は眉毛にかからない、横は耳にかからない、後ろはカラー(襟)にかからない」という納得できないものだった。学区の散髪屋はすべて学校から通達がまわっていて、僕が「長めにして下さい」と頼んでも、「校則だからね」とニヤニヤ笑って聞いてくれない。なので、わざわざ学区の外の散髪屋に行ったり、姉に切ってもらったり、自分で切ったりしていた。自分で後ろ髪を切り過ぎて、地肌の一部が出てしまい、後頭部を手で押さえて隠しながら授業を受けていたこともある。
 グラウンドでの朝礼では頭髪検査があり、違反者は列の前に出される。この検査をする生活指導係をやらされたこともある。頭髪検査をもっとも真面目にやりそうにない僕をクラスのみんなが強く推薦した結果だ。みんなに推薦された時はまんざらでもなかったが、いざ朝礼で頭髪検査をやらされた時は本当に嫌だった。適当にやったので生活指導の先生に呼び出されたが、無視して帰って先生を怒らせた。

■中2病?■

 冬に制服を脱ぐときには教師の許可が必要というルールがあった。暑くて上着を脱ぐのにいちいち許可を取るということのばからしさを教師にわからせるために、ある授業でイタズラをした。一人が挙手して「上着を脱いでもいいですか」と聞き教師が許可すると、数十秒後に別の生徒が、そして次の数十秒後にまた別の生徒が、と順番に許可を求めて授業の進行を妨害するのである。
 ある教師がなんだか好きになれず、数人の生徒達とその教師のマネをしてからかったり反抗的な態度をとったこともある。「中学生って、後から振り返ったら恥ずかしいよね」と最近僕の娘が言っていたのだが、まったくだ。

<2011年9月「びば!まなびば 2011秋号」>

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